一言
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「今日は鬱の人が来るね。この人には何か音が必要だね」
瞑想から目覚めた僕は、そう言ってゴールデンボールを取り出した。チベット仏教で使う金色のボールの事だ。チーンと鳴らして淵を撫ぜると共鳴していい音が鳴る。
「願わくば、この人の心に平安がありますように」と想いを込めながら、ゴールデンボールを鳴らした。

そしてお客様が部屋に入ってきた。見るからに元気が無い、鬱っぽい顔をしていた女性の方だった。
彼女の父親が半年程前に亡くなられた頃から、そんな状態になってしまったそうだ。
常に死を意識しているような状態だった。

僕は彼女と話をしながら、彼女の進む今後の方向性を決めていく。そしてそれに合わせてエネルギーを動かしていく。
セッションも終わりに差し掛かった頃、僕は彼女に聞いた。
「何か質問はありますか?何についての質問でもかまいませんよ」
すると彼女はこう言った。
「私のお父さん。癌の告知をされてから3ヶ月で死んでしまったんです。言い残した事いっぱいあると思うんです。今、お父さん、私の右肩の方に居ますよね。肩が暖かいから、此処に居るのは解っているんです。」
「私に言い残した言葉って一体何なんでしょう?それを教えて欲しいんです」

僕は目を瞑って彼女のお父さんを見つめた。彼の言葉を聴いて、それを口にした。
「生きて欲しい」
「お父さん、あなたに生きて欲しいって言っていますよ」

「それが、お父さんが私に言いたい言葉なんですか?」
「そうですよ」
そう僕が言うと、彼女の瞳から涙がぼろぼろと流れ始めた。

「お父さん」
泣きながら、咽びながら、肩を揺らしながら彼女はそう吐き出すように口にした。


2時間という長いセッションの中で、彼女に残ったのはたった一言、「生きて欲しい」という言葉だけだった。そしてその一言が彼女を変えた。セッションを終えた後、彼女の鬱は無くなっていた。
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by rev-umachan | 2010-03-30 18:16 | 個人セッション(ストーリー)
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