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お盆の出来事
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「この何も無い風景を見ただけじゃ信じられないだろうけど、ここには400から500戸の家があったんだよ」
建物も何も無い原っぱを指して、Sさんがそう説明してくれた。
説明してくれなかったら只の原っぱにしか見えない、遠くに海の見える何も無い空間。
ひしめき合うように建っていた家は、津波にさらわれてしまっていた。


「この校舎の2階の上にある三角の部屋。あそこに非難して、全校生徒100人程が奇跡的に助かったんだよ」
何も無い原っぱにぽつんと建っている校舎。山元町立中浜小学校と看板がある建物を見てそう言うSさん。
幸いにも子供達の命は救われた。そう聞いてほっとした。
小学校の周りには、あったはずの家が全く無い。きっと多くの命も流されてしまったのだろう。想像が出来ない程ひどい状況だ。
それでも、子供達の命が救われたと聞いてほっとした。

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「ここから40キロぐらいのところに福島原発があるんだよ」
強い風が吹く中、風上を指差してそう言うSさん。
福島に生まれ育った僕には、小さい頃から馴染みがある原発だ。今では近づく事も出来なくて、多くの人達が避難せざる負えない。
福島からの風には、やりきれない悲しい気持ちが乗っているようだった。


そして僕らは笛を吹いて、太鼓を叩いた。
みんなの顔に久しぶりに笑顔が戻る。

家族を亡くした人、多くの友人を亡くした人もいただろうに、
訪れた夏祭りの会場には笑顔が戻っていた。

先祖の魂を迎えるお盆だったから、
亡くなった親しい家族や友人の心を感じる時だったから、
笑顔が戻ったのだろうか。
親しいからこそ、亡くなっても心を通わせたい。
そう思うのが自然な時だったのだろう。

「またきっと此処に戻ってきて欲しい。戻ってきて、心のケアをして欲しい。皆、抱えている物が大きすぎる。家族や友人達が死んでいくのを何も出来ないで見ていたんだよ」
数時間前に初めてあったSさん。心の底から搾り出すような言葉だった。

「また此処に来たい。来て皆に何かをしてあげたい」
そう思わないではいられないSさんの言葉だった。
by rev-umachan | 2011-08-18 17:33 | 日常の情報
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